ソ連軍重戦車 KV−1
徹底改造

(前編)

 KV−1 E型(タミヤ製1/35スケール プラスチックモデル)をそれなりに徹底改造してみたい! とはいっても、俺的考証に基づくものなので、間違っている可能性があります。あまり参考にしないでくださいよ。しないか。今回は前編ということで改造工作のみ。塗装〜完成は後編で。
 なお、キットの名称は「KV−1 B型」だけど、今回はE型(エクラナミ=増加装甲)の名称を使いますよ。
 今回の主な参考資料は、
「グランドパワー」No41・No75
 何といっても写真が大きいのが良い。75号は機関室のメッシュ部分の鮮明な写真(P61)が重要だけど、肝心のE型の写真は41号のものとほぼ同じもの。残念。
 解説文では「GP○○・P○○(ページ数)」と表記しますよ。
モデルアート別冊「T-34・KV戦車シリーズ」
 パローラ博物館のE型の写真を参考程度に。10年以上前の本ゆえ、作例模型自体は参考にならない。モデルグラフィックスにもパローラ博物館の写真が載ってる号があったと記憶しているのだけど・・・
「RUSSIAN TANKS AND ARMORED VEHICLES 1917-1945」(洋書)
 E型の写真は多いけど、写真が小さいのが残念なり。
「重戦車KW」(洋書)
 ポーランド、ペルタ社の本。細部のイラストがかなり役立つ。じゅーよう。最近別のトコから再販された模様。
「STALIN'S HEAVY TANKS 1941-1945」(洋書)
 E型の写真は少ないけど、まあ基本ってところ。

 他にも戦車マガジンやらPANZERやら色々。
 あと「KV maniacs」の、かば@さんに助言をいただきました。感謝!

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 このようにボルトが各所に並ぶイカすデザインなのだ。強そうだね!
 1972年に発売された「KV−1 C型」のキットに、砲塔や増加装甲を新規金型で作り起こして1988年に発売された古いキットだけど、タミヤ製ソ連戦車は傑作ぞろいと言われるだけあって基本的には大きな修正点は無く、ストレート組みでも良い物ができる。しかし、いかんせん元のキットが30年近く前の物なで、細部を気にしだすと(良い意味で)いじりがいがあるキットだと言えましょー。

 今回の作例は、全くのストレート組み(ヒケ埋めすらしてなかった)でほぼ完成状態の物が箱から出てきたので、何となく手を入れようと思い立ったのがきっかけ。キットにしてみたら作りかけで何年も放ったらかしにされてたのが、いきなり無茶苦茶手を加えられた上に全世界に発信されるとは夢にも思わんかっただろうね。田舎でひっそり暮らしていたあか抜けない女の子が、スカウトされてエステだの整形だのされて、いきなり全世界デビューってところか(わけわからん)。

[ 足周り ]
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 キットの起動輪は後期型を再現しており、ボルトの数が初期型の半分しかないので増やす(A1)。内側のボルトも見えるところだけ追加(A2)。さらに細かい事言うと歯の数もひとつ多い(昔のキットによくあるミス)んだけど、この修正は面倒だし、激しく気になるほどのものではないのでキットのまま。
 上部転輪のホイルキャップは疑問。キットの形状の物は資料では見あたらなかったので、4号戦車のものを流用(A3)。本当はKV1−C型のがあると楽だったんだけどね。
 転輪は外周の穴が小さいので大きく(A4)。作例では1.4ミリ径。ホイルキャップの6つの穴も小さい上に中心がずれているので、キットの穴を埋めて別のところに開け直す(A5)。ただし、この穴は貫通しているのではなく、深さ0.5ミリくらいで止める。実車では中のゴムが見えており、時間が経つと自重のせいでゴム部分が穴からはみ出してくるようだ。
 なお、転輪は正確を期すなら図のような断面で完全に自作すべき。これは大変だけどいつかは自作して量産してワンフェスで販売(妄想)。いつかはクラウン。
 サスペンションアームの付け根のボルトは初期型は6つだが、今回は息切れ(A6)。ここは後で泥でごまかす。
 あ、作例のようにフェンダーが取れた状態にする時は、車体上部パーツと下部パーツの継ぎ目は完全に消すこと(A7)。実車では車体側面は1枚板だよ〜ん(CDTV風)。
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 キャタピラ(登録商標)はモデルカステンの可動式のものに変更。キットのパーツがある程度以上の出来ならば、わざわざ高価な別売りパーツを使うこともあるまいと思う私だが、流石にこのキットの物(右の黒いの)は使えない。裏側にモールド無いし。
 モデルカステンのキャタピラは今回初めて作ってみたけど、組立自体は想像してたより面倒くさくはないね。ただ、押し出しピン跡(B1)を消すのが超苦痛。ひとつひとつパテ埋めしてペーパーかけて・・・一種宗教的な儀式のようだ。いっそのこと部品にお経をモールドしておいて、チベットのアレみたいに「ひとコマ組んだら教典を1冊読んだのと同じ」と言う風にしたら霊的ステージ上がりまくりだがどうだろうか等といらん事を考えていた。完成すると小気味よくクネクネ動くので、ついつい遊んでしまう。くねくね。
 そうそう、このキャタピラを付ける時は、側面下部装甲板をキットの組立指定よりも2ミリ下に接着するように指示があるけど、どうにもならんくらい強固に接着してあったので修正は断念。調べてみると、キットの指定位置はそうでなくても上過ぎるように思うがいかが?

[ 車体前部 ]
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 ライトは被弾して吹っ飛んだ設定なので、基部だけ自作(C1)。ライトコードは削り取ってリード線で作りなおす(C2)。初期型ではコードの位置自体がキットとは違うので要チェックや!
 操縦手クラッペのスリットは太いので、パテで埋めて細く掘り直し(C3)。すぐ横の機銃の跳弾リングは微妙に形状が違うので、作りなおした(C4)。アールがキットよりももう少し小さいのだ。すごく微妙。
 車体最前部の接合板は、初期型では車体の幅いっぱいまであるので、左右に延長。同時にスポット溶接の跡を付ける(C5)。コレの再現の方法にはちょっと悩んだが、1ミリ径の金属棒を火で熱してからちょっと押しつけることで想像以上に簡単にできた。なお、この溶接跡は生産時期によって数が違うので資料を参考のこと。
 前部フェンダーの車体への取り付けボルトは、金型の都合で車体側にあるけど、実際にはフェンダーの垂直面側にあるので修正(C6)。
 ペリスコープの位置を右に1ミリ移動(C7)。同時に、前面追加装甲版の切れ込みも写真を参考に修正。あと、このペリスコープは砲塔の物と同型なのでこれまた改造。その後ろにある、砲塔基部の跳弾板は無い方がE型では一般的なので全て削り取る。
 足周りの項で触れなかったけど、誘導輪基部の履帯調節機構はプラ棒で作り直し。厚みも足りないようなので、1.2ミリプラ板を貼ってみた(C8)。誘導輪自体は手を入れてない。


[ 機関部と車体後部 ]
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 キットは機関室のボルトの数が少ない後期型を再現しているので、これまた追加&一部削除(D1)。同時に円形ハッチ周囲のモールドや小さいボルトも追加(D2)。
 メッシュ部分は削り取って金属メッシュで再現(D3)。GP75・P61超参照。今回は80番メッシュだけど、60番の方が良いかも。メッシュの左右のボルトの数も違うので追加。マフラーはヒケをパテ埋め&ピンバイスで開口(D4)。エアフィルターハッチの膨らみ頂部のモールドは調べると意外に付いてないので今回は削除(D5)。それとアイボルトも初期型はひとつだけなので修正。あ、これに取り付けてあるワイヤーは面倒なので付けなかったけど、実車ではほぼ付けてるよ(D6)。
 車体後部の空気取り入れ口の網を80番メッシュで再現(D7)。実車でも割と適当に取り付けてあるので気楽に。その下の整流板はキットの物を使わないでプラペーパーで自作(D8)。サイズはキットの物を参考にしたけど、実車写真を調べると、車体によって車体幅いっぱいだったりそうでなかったりする。
 テールライト(昔はこれが排気管だと思ってた)は取り付け部分を再現する都合上、削り取って自作(D9)。なお、整流板もテールライトもはじめから取り付けてない車両も多かったようだ。

[ 砲塔 ]
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 防盾のボルトは飛び出しているように改造(E1)。写真を良く見ると、防盾の下に何かある(ボルトではないようだが)のでソレっぽく再現(E2)。画像では分かりづらいけど機銃も再現してみた(E3)。防盾カバーにはボルト等を追加(E4)。
 手すりは0.5ミリの銅線(E5)。ベンチレーターカバーは断面がなんとなく台形状になるように少し削った(E6)。ペリスコープの取り付けボルトは埋め込み型らしいので削除(E7)。
 砲塔の側面増加装甲は前後で一旦切り放し、段差を付けて接着。同時に前半分の天井部分は削除(E8)。GP75・P65では「外されて」とあるが、この仕様の車両写真が複数あるので、今回はこれ。てゆーかここの天板が付いている写真って確認できなかったのですが。
 逆に後ろ半分の増加装甲のペリスコープ部付近(E9・下画像)や下側(E10・下画像)は塞がれているようなのでプラペーパーで塞いだ。
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 ハッチ裏側はキットのモールドに手を入れる程度で良いかと思っていたのだけど、結局全部削り落としてプラペーパー等で自作(E11)。あーマニアはやだやだ(byちあり伊藤)。ちなみにハッチ裏の手すりは、写真によっては逆側にあったり、革製の物も見られるのでまだまだ調べる必要がありそうだ。ファーイーストリサーチ社に頼んだら長方形眼鏡の人が調べてくれるだろうか? ハッチ周辺も写真を参考にディテールアップしたけど今回はいまいち。あと、筒型ペリスコープの後ろにボルトを追加(E12)。
 機関室を誤射しないためのストッパーを砲塔後部機銃の下にプラ板で再現(E13)。あと、砲塔後部の張り出し部の裏には補強用(?)の板があるのでプラペーパーで(E14)。ボルト止めだと思われるけど確認できなかったので何も付けず。この補強板は手元にある資料の図面には一切描かれていない(何とかいう洋書にはあったけど買ってない)ので、寸法は写真を見ながらそれらしく。一言で言うと適当。

[ フェンダー ]
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 キットのフェンダーは幅が広すぎ。上から見るとキャタピラがはみ出すのが正しいのだ。
 てことで、幅約18ミリになるように左右端を切り放して、端のL型補強材をプラペーパーで復活(F1)。本当はフェンダーを丸ごと1ミリ程下にずらした方が良いようだけど、今回はパス・・・しかし、あとでバトルダメージを再現することを考えると、金属板で完全に作りなおした方が楽だったかも。
 フェンダー支持架はE型ではすべて肉抜きされているし、キットのままでは厚いので削り取って作りなおす(F2)。取り付けボルトもこの頃のKVは、フェンダー部6つ(後期型は4つ)、車体取り付け部3つ(後期型は2つ)なので間違えないように(F3)。
 工具箱は、0.3ミリ銅線やプラペーパー等でディテールアップ(F4)。左側の一つだけプラペーパーで蓋を作りなおして、へこみや被弾跡の表現をしてみた。
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 フェンダーは実車では3分割されているので、切り放す際は適当な部分で切らないように注意。切り取った場合はフェンダー裏側のL字型補強板2本を再現するとポイント高井ちゃん(懐かしいな、おい)だけど、今回はあえて忘れた。

 てことで、今回はここまで。
 しかし、こう事細かに改造して解説すると、模型雑誌のライターになった気分。持ち込みしたら原稿料出ただろうか(注・この程度じゃ出ない)。ま、今回これだけ説明したのは塗装するとどこをディテールアップしたか分からなくなって癪だからなんだけどね。

以上!


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